おもてなしを考える

ここ数年、海外旅行に行く中国人がかなり増えてきています。そして日本は、常に海外旅行の行き先ランキングの中で上位に入っています。

なぜ、たくさんの中国人が旅行先に日本を選んだのでしょうか? 私は大きな理由が三つあると思います。

まず第一に、日本のサービスが良いことです。じつは日本に旅行に来る前に、中国の人はみんなネットやテレビなどで日本に関する情報をよく調べています。とくにいま中国で利用率の高いSNS、「ウェイチャット(微信)」や「ウェイボー(微博)」では、日本の社会や文化について多くの情報が発信されています。その中には、例えば「日本のサービス」、「日本の良質な商品」「日本のこだわり」といった記事がたくさんあります。つまり日本に来る前から、日本で受けることができるであろう質の高いサービスに、多くの観光客が強い期待を抱いていると考えられます。

ではなぜ、そんなに日本のサービスが良いと思われているのでしょうか? それは、日本に来た旅行者たちが日本のサービスを実際に体験して、自国(中国)との比較から分かったことではないかと思われます。そしてそれが訪日旅行客の急増とともに、たくさんのクチコミ(SNSを含めて)で広がったのだと思います。

実際に日本の接客マナーは、中国とはかなり異なっています。日本のデパートで買物をしたときに、店員さんが最初から最後までずーっと、ほど良い笑顔で接客応対してくれるのを見て、「やはり違いますね。」と言っている中国人が少なくありません。日本では当たり前になっている笑顔の接客は、外国人が見ると“プロの笑顔”と感じるのです。しかも中国では、そういう“プロの笑顔”は、やっとこの数年少しずつ見られるようになってきましたが、それまでは店員はみな無表情で、笑顔で接客する光景は殆ど見られませんでした。そして、それが中国では極めて当たり前の、普通の買物の光景だったのです。

それから、お客様に無理やり商品をおすすめしないことも、日本の接客マナーの大きな特徴です。気持ちよく買物したいという気持ちは誰でも一緒で、日本人でも中国人でもそこは同じだと思います。しかし中国では、「個人売上」の目標を達成するために、無理やりお客様に商品をおすすめしたり、お客様にとって必要ないものを買わせたりする店員がいます。そういう状況を比較すると、言葉が通じなくても、日本の方が買物しやすいと感じる中国人は多いのではないかと思われます。また、背景にそういう状況があるので、もし中国でずーっとほど良い笑顔で接客する定員さんがいたら、むしろお客様はその笑顔に警戒感を抱いてしまうようなところがあるわけです。だから媚びるような笑顔は不要で、普通の表情で説明する方が誠実で信頼できるという感じです。つまり、接客マナーの背景にあるものからしてかなり違っているわけです。

日本を旅行先に選ぶ理由の二つ目としては、日本のモノの“安全性が挙げられます。最近中国では食べ物の安全性と環境問題がよく報道されています。そうした中で、生活用品や飲食物を買うときに、まず安全性を気にする中国人が増えつつあります。一方、日本製品は世界中から「良質」という評判を得ています。所得が豊かになって質の高いモノを買いたくなった、主に都市部で暮らす中国人にとっては、日本を旅行するときに安全で質の高い日本製品をたくさん買って帰るのが“お得”だし、それが“最初の旅行目的”という人も多いと思います。

理由の三つめは、去年から香港に行く大陸からの旅行客が激減していることと関係があります。もともと大陸から香港に行く観光客の旅行目的は、「買物」と言いきって過言ではありませんでした。とくにブランド品を買いに行く観光客が中心だったと見られます。それが、日本ではニセ物がないため、同じ値段で香港より安心して買物ができるし、地理的にも欧米に行くよりは日本に行く方が近くて便利と考えて、買物目的で日本に来る中国人が多くなっているわけです。

中国では、ネット上に日本旅行のクチコミ情報が非常にたくさんあります。その記事の多くは日本を旅行してきた人々の感想や「旅行攻略」です。そうした中には日本で体験したものごとの他に、日本の「おもてなし」に対する感想や考えもいろいろ表現されています。クチコミ情報の中でいちばん多いのは、「日本人は笑顔のレベルが違う」「誰にも優しく親切」「モノの質が良い」などの感想です。

しかし、日本の「おもてなし」は、笑顔と親切にとどまっているのでしょうか?もう少し、その辺を深く考えてみたいと思います。(続きは来週…)