中国の富裕層はなぜ日本の不動産を購入するのか?

増加する中国人の海外不動産投資

一昨年頃からでしょうか、日本を訪れる中国人旅行客の中に不動産を購入するために来ている人が増えているという話を聞きます。友人の留学生の中にも、日本の不動産会社が東京で開いた中国人向けの不動産投資説明会に、中国から来たお父さんと一緒に行ってきた人がいます。不動産会社の人の話によると、その場で見て決めるお客さん(中国人)が多いそうです。中にはビル1棟を丸ごと買う人もいるそうです。

昨年(2016年)6月に、和歌山県白浜町に開発中の別荘エリアで中国人の購入者の名前が書かれたプレートが数多く見られたということを、中国新聞網が伝えました。中国人による日本不動産の購入は、都市部だけでなく地方にも目を向けていることが分かります。

不動産購入①

昨年の中国の海外不動産投資額は過去最高で、330億ドル(3.7兆円)に達し、伸び率は前年比53%増とのことです。投資先のトップはアメリカで143億ドルが集中、続いて香港、マレーシア、オーストラリア、英国の順で、日本が上位ということではありませんでした。一方、中国国内の不動産投資額も昨年は6.9%増の1兆5,100億ドルと、GDPを若干上回る伸び率で健全に推移しています。

中国人が海外の不動産を買う理由

では、なぜ中国からの海外不動産投資が伸びているのでしょうか?

1つは、中国では住宅購入制限、住宅ローン規制といった不動産市場に対する引き締め政策が続けられているので、中国国内での不動産投資のほかに、海外不動産投資も視野に入れている人が多くなってきているということがあります。

それに、近年中国の不動産市場が大きく成長して、とくに都市部の不動産価格が高騰したため、不動産投資を考える人は中国の不動産より海外の不動産を買った方がお得だと考えるからだと思います。それについて、昨年秋ごろの比較になりますが、下記のデータを見てみましょう。

新築マンションの場合:

・中国・上海の静安区周辺の2016年不動産の平均価格は、内装抜き70㎡(使用面積50㎡くらい)の新築マンションは406万元(日本円に換算すると6550万円くらい)です。

・日本・東京都渋谷区周辺の不動産2016年の平均価格は新築マンション(内装付き)で使用面積70㎡の物件が7000万円くらいです。

日本の新築マンションの方がやや高いですが、使用面積が大きく内装付きであり、安全性やこれからの東京オリンピックに向けた値上がり可能性を考えると、日本の方が不動産投資の魅力が高いということなのでしょう。

新築一戸建ての場合:

・上海静安区の新築一戸建ての平均価格は、建物面積100㎡の物件で1億5千万元(日本円:2億5千万円くらい)です。

・渋谷区の新築一戸建ての平均価格は建物面積100㎡の物件で8100万円です。この比較でみれば、日本の一戸建ての方が圧倒的にお得に感じます。

不動産購入④

中国人は、マンションより一戸建てを所有する方により興味を持っています。同じ価格でマンションと一戸建てのどちらを選ぶかといえば、一戸建てを選択する中国人が多いと思います。ですから、一戸建てを購入して投資対象にするほか、自分の海外別荘として購入する中国人も少なくないでしょう。

また、日本の不動産を買う場合に銀行から借りるローンの金利が、中国で不動産を買う場合の金利より低いところも、中国の富裕層が海外不動産投資に引き寄せられるもう1つの理由になっていると思います。

■もともと不動産に対する執着心が強い、中国人の価値観

では、なぜ中国人はそれほど不動産を積極的に購入するのでしょうか?

昔から中国人は「土地」に対する強い執着心を持っています。土地はイコール「家財」です。土地をどれほど持っているかが、その家がどのくらいの資産を持っているかということになっていたのです。それが、新中国の成立後は土地が買えなくなり、家を買うのも「所有権」ではなく、70年間の「使用権」だけとなってしまいました。その期間を超えたら、手数料を支払わなければ住んでいられないという決まりがあります。とはいっても、70年間の使用権があれば、普通は生涯そのマンションで暮らせると考えられます。が、どうして中国人は別のマンションを買うことに夢中になるのでしょうか?それは中国人特有の価値観によるものと思われます。

不動産購入②

近年、中国人の間では「マンションを持っていない男性は結婚できない」という話題が、ネットでも盛り上がっています。結婚前に男性は、「マンション何軒を持っている?」と女性の両親に聞かれます。中国ではいつの間にか、「車とマンション」は男性が結婚できるかどうかの、つまり新しい家庭を組むことができるかどうかの、必須条件となってしまいました。もちろん若い人にそんなお金はありませんから、親が買って息子に与えるのです。

中国人の両親は子供の人生をすべての中心に考えています。ですから、実際にマンションをいくつ持っているかの数にこだわっているわけではありません。ただ、結婚した後、子供が余裕のある生活を送って欲しいという強い願いがあるのです。さらに、孫のことまで考えるのも普通のことなのです。つまり、変化の激しい中国の社会でもマンションをいくつか持っていれば、子供や孫の将来の生活が安定したものになると考えるわけです。それに、子孫継承ということを重視する中国人にとっては、資産を残すことが子孫繁栄の条件になるのです。

現在、土地に対する執着は既にマンションに移ったと言っても過言ではありませんが、70年間に限られたマンションの使用期間では足りない、安心できないという想いがあるわけです。海外でのマンションの購入はその使用期間が設けられていません。そうしたところに、中国人が海外不動産に投資し始めた大きな理由があると考えられます。

不動産購入③

■今後も続く、中国人富裕層による日本不動産の購入

もともとマンションは人が住むために購入するモノだと思われますが、今はその感覚が少なくなり、投資の対象になってきていると思います。日本は地理的に中国と近く、社会や経済が安定しているので、日本の不動産は安全性や値段の面からも投資対象として最適と考えられています。

また、投資の利回りの良さも指摘されています。例えば、日本の3600万円の中古マンションを賃貸すれば、1年間に200万円の賃料収入が得られるというわけです。さらに、家賃だけではなく、観光客が増えている中、民泊としての利用も多くなってきています。

一方、今まで中国人による日本の不動産投資は、東京や大阪などの大都市や、箱根などの有名な観光地に集中していました。しかし、何回も旅行で訪れて中国の富裕層の日本への理解が深まるにつれて、小さい温泉地や外国人にあまり知られていないリゾート地にも、目が向けられる傾向が現れてきています。

「爆買い」が終わって1年半くらいになりますが、不動産は中国人にとってもともと特別なものだけに、不動産購入の方はまだまだ続くのではないでしょうか。