中国人旅行者の増加が育む、日本人と中国人の「真の交流」

最近、東京の繁華街ではいつでも、中国人旅行者の姿を本当によく見かけるようになりました。昨年の訪日中国人旅行者数は一昨年に比べて倍増。さらに日本のメディアでは昨年から「爆買い」という言葉がよく使われるなど、日本人のみなさんは、中国人の間に大きな日本旅行ブームが起きているように感じられていることと思います。

ホテル予約サイトの「ホテルズ・ドットコム」が行った調査によると、中国人旅行者が今後1年間に最も行きたい国はオーストラリアで、日本は2位でした。じつは昨年海外旅行に出かけた中国人旅行者は約1億2千万人、その中から約500万人(約4%)が日本に来ただけで、中国人から見るとブームと言える状況ではありません。また中国人の海外での消費データから見ても、海外旅行に出かけた中国人の海外の消費総額1,820億ドル中、日本は約124億ドル、韓国は220億ドルとなっており、日本でとくに爆買いしているという状況でもないことが伺えます。

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しかし現実の動きとして、2015年に続いて16年上半期も中国から日本を訪れる旅行者の数は増加し続けており、まだ分母は小さくてもその増加率は41%と高く、中国人の海外旅行者全体の増加率が4%増、また韓国への中国人旅行者は減少傾向という状況の中で、日本旅行はブーム的な動きと見ることもできます。

でもどうして?と、改めて私たち留学生は、「なぜ中国人は日本行きを選ぶのか」という疑問にたどり着いたのです。もう少しその辺を客観的にご説明したいと思います。

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歴史を遡ると、近代以降は決して日本と中国の関係が良いというわけではありません。中国と日本、或いは中国人と日本人の間にも、残念なことですが、私たちは「真の交流」といえるような関係、おそらくそれは人と人が自然に触れ合い、語り合うような関係だと思いますが、そうした関係性が感じられない状態が続いているように思います。

いま、一般の日本人のみなさんが中国に対して持っているイメージとしては、メディアの報道をそのまま受け入れて『中国人はマナーが悪い』『中国の海洋進出は脅威』というような印象が強いのではないかと思います。

一方、多くの中国人も、残念ながら日本に対して良い印象は持っていません。子供の頃から、侵略戦争で受けたいろいろな出来事を中心に、「洗脳教育」などと揶揄されるような歴史教育を受けてきていることもあり、「日本人は好戦的で、反省能力のない民族だ」と思っている人が多いのです。しかもそうした感情は、日本の歴史教科書から侵略の歴史が削られたという報道や、日本の総理大臣が戦犯が祭られている靖国神社を参拝したという報道が出ると、「ほら、やっぱり!」と強まります。アヘン戦争以降の植民地化の歴史もあり、中国人の間には「国は強くなければバカにされる」という意識もあります。

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でも、そういう状況がありながらも、中国人が海外旅行にどこに行こうかと考えるときに、日本は手軽な旅行先として、多くの中国人を惹きつける国になっています。それは、例えば日本人の皆さんも歴史や領土問題などからロシアに良いイメージは持っていなくても、芸術や文化には惹かれるものがあり、ロシアに旅行に行く人がいるのと同じではないかと思います。

その理由はいろいろ考えられますが、まず第1に、中国から日本に行く飛行機の時間は短く、体力的に負担にならない範囲です。飛行時間で見れば、日本旅行は中国の国内旅行とあまり変わりません。費用はタイに行くのと同じくらいです。

さらに、日本の漫画、アニメなどのポップカルチャーはかなり以前から世界中に流れているので、今の中国の若者たちが子供の頃から見てきたものは、日本の若者たちが見てきたものとそんなに変わらないと思われます。ですから若い人にとっては、「漫画の大国で少年時代の自分の夢を追いかける!」というのは、日本旅行に行く大きな理由の1つになっているわけです。

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その一方、日本の伝統文化と中国の伝統文化は本来同根であり、年配の方々や歴史に興味のある若者たちは、日本への旅行の中で茶道や着物、建造物などに触れると、まるで遥かな古代の中国に入り込んだような感覚を抱くことになるのではないでしょうか? 都会の風を受けながら、日本伝統の風雅の世界に飛び込むのも良いでしょう。中国文化と深く関わりのある日本の伝統文化は、それと意識せずに中国から来た旅行者たちにも、きっと独特の興味を抱かせることでしょう。

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そうした様々な魅力のある日本旅行は、中国から何回も訪れるリピーターが多いことで知られています。その理由を考えてみますと、まず日本の環境と治安の良さが挙げられます。もっともこの点は世界中に知られている日本の良いところですね。安心して旅行できるのは大きなポイントだと思います。

そして、日本の「おもてなし」もリピーター客を呼び寄せています。さらに日本には質の高い商品がしっかり揃っていて、値段も比較的手頃で、気持ち良く買物ができます。

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また、中国には「民以食為天」(民は食を以て天と為す=人々にとって食べることが最も大事)ということわざがあります。

中国人にとって日本の食べ物は健康的で安全性が高く、日本にしかない和食を味わうのも大きな楽しみの1つなのです。

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(中国側「左」:あんたのこと好きじゃないけど買物には行きたいよ)

(日本側「右」 :あんたのこと好きじゃないけど買物に来るのは歓迎だよ)

ここで少し話を戻しますが、上の漫画を見てください。

日本を訪れる中国人がどんどん増えてきている現況ではありますが、留学生から見ますと、上の漫画に象徴されるように、中国人も日本人もお互いギクシャクした違和感を感じているように思います。

その根底にあるのは、これまでお互いが相手にもたらしてきたマイナスのイメージだと思います。日常の中でも接触する前に攻撃的な態度を取ってしまうなど、本来1人の人間と人間がごく自然に相手を気遣いながら付き合うという意味での「真の交流」とは程遠い在り方だと思います。そのような交流では、ただ一時的な利害関係のようなものになってしまうと思うのです。

では、「真の交流」とは、どういうことなのでしょうか? 私たち留学生が思うには、人と人とが自然に触れ合うことだと思います。またそうすることで、お互いの国の民族・文化・歴史・風習などを理解し合うことだと思います。日本人と中国人の交流を軸にして多彩な事業を展開している組織がたくさんありますが、両国民の「真の交流」はなかなか拡大していきません。

それでも私たちは、近年の旅行者の増加の動きは、「真の交流」を創っていく大きなチャンスであると期待しています。旅行者が増えるにつれて、お互いの文化への理解が深まり、人と人との自然な触れ合いに近づくことができるのではないかと考えています。

例えば、日本に旅行に来た中国人は、ネットで「日本は驚くほど綺麗だった」「日本人の子供たちへの教育は素晴らしかった。思いやりがあるし、今度も行きたいと思います」というようなコメントを数多く発信しています。そして、旅行者に一生懸命日本語で「ありがとう」と言われたら、可愛い、嬉しいと感じる日本人もいます。日本語が分からなくても日本語で挨拶する観光客を見たら、感動を感じるという話もありました。一般の人と人の間で、こうした交流が少しずつ進んでいくのではないかと思われます。

また、日本政府は「中国人向けの商用目的や文化人・知識人向けの数次ビザの有効期間を、現行の『最長5年』から『最長10年』に延長するとともに、「中国教育部直属75校の大学の大学生・院生らのビザ申請手続きを簡素化する緩和措置」を検討しています。こうした動きに後押しされて、日本への旅行者の中に知識層の人たちを増やすことができると思いますし、きっと私たちが求めている「真の交流」への道も広がっていくと考えられます。

そういう流れの中で、日本の皆さんに1つだけお願いしたいと感じることがあるのですが、それは、英語力と、外国人と普通に交流しようとするマインドをもっと高めてほしいということです。何事に対しても一生懸命取り組む力のある、勤勉で優秀な日本の皆さんが、なぜアジアの国々の中でも英語力が低いのか、とても不思議です。そこが高まってくれば、中国からの旅行者だけでなく世界中からさらに多くの旅行者を呼び寄せることができると思いますし、世界の人々と「真の交流」を創っていくことができるに違いありません。

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