訪日旅行者は「おもてなし」をどう感じているか?—⑥中国からの旅行者について、日本人スタッフが知っていた方が良いこと—

今回は「おもてなし」についての最後です。これまでのシーン毎のお話ではなく、今回は中国からの旅行者を「おもてなし」するときに、日本人スタッフの方が知っていた方が良い中国人の生活習慣や考え方、「おもてなし」接客への感じ方について、10人の留学生の目線からお伝えします。

(1)「メンツ」の大切さ:

・とくに40歳以上の人はメンツが重要で、その意識は男性の方が高いと思われます。

・応対するスタッフさんは、買物や飲食店等で安い商品を選びにくくしないよう、価格については商品説明の中でさりげなく伝えるなどの配慮が必要だと思います。 (価格の話だけを切り離して「ご予算は?」とストレートに聞くことは、しない方が良いと思います。)

・通訳サポートする中国人アルバイトにも、メンツを潰さない配慮を指導しておくなど、微妙なことなので丁寧な対応が大事です。

・例えば、温泉の入り方やフェイスカバーの使い方など、日本のルールを伝えずにいきなり皆の前で「それはダメ!」と注意すると、日本人の感じ方とはかなり違って、メンツが潰されたことになり不快感が高まります。

⇒「自分のメンツ」の他に「中国人としてのメンツ」が潰されたという感覚もあります。(『だったら先にそう言え!』となります)

・じつは中国では日本と違って、小さい時から人前で注意されることはなく、学校でも職場でも注意するときは別室で個別に行うのが普通です。子供の時からメンツに配慮するのが中国の社会なのです。

もちろん、「郷に入らば郷に従え」ということは中国人も踏まえているので、ある程度の期間日本で暮らしている留学生や在日中国人は、日本社会のルールを理解しルールに従って暮らしていますし、旅行者も日本では日本のルールに従わなくてはと思っているのです。ただ、そのルールの説明がないまま、知らないことでみんなの前で注意されると、理不尽じゃないかと感じてしまうわけです。

(2)「中国人は…」と、ひとくくりに言われるのが嫌な旅行者も多い。

・農村部でもお金持ちが増えてきて、マナーの意識が低い人も日本に来るようになってきましたが、都市部の教育水準の高い人たちは、中国人がみなマナーが悪いと思われるのは嫌なんです。「中国人としてのメンツ」という意識もあります。

・日本の方から見ると、「でもマナーの悪い中国人が目立つ」という印象があると思いますが、個人旅行が多数派になった今、とくに30代くらいまでの若い層はある程度英語も話せますし、欧米に旅行した経験のある人もたくさんいるので、世界の常識を理解している人が多くなっているわけです。

そういう状況なので、外国人にとって分かりにくいことを説明するものを用意するときは、英語と中国語の併記が良いと思います。(中国語だけだと、「世界の中でこんなことも知らないのは中国人だけだと思われている」というようなニュアンスになりかねないわけです)

(3)中国人は日本人より話し声が大きい。

・日本の方から見ると、中国人は声が大きいと感じるでしょうけど、声が大きくても決して喧嘩をしているわけではないんです。逆に中国人から見ると、「日本人は静かなのが好きで音に敏感な民族」というイメージがあります。

(4)中国人旅行者から見ると、接客サービスはもっと普通でもいい。

・日本の「おもてなし」サービスを、みな本当に良いと感じていますが、中国からの旅行者は接客態度についてそんなに厳しいことを求めていないのも事実です。例えば何か間違えても、日本人のお客さんのように怒ることはないので、謝り方ももっと普通でいいと思います。

・全体的なサービスの在り方は今のままで十分だと思われます。時には丁寧過ぎてちょっとウソっぽい感じを受けたり、ストレスを感じるときもあるくらいです。

・逆に、外国人に対してもっと普通で自然な応対をすることが大事なのではないでしょうか?それはきちんとした丁寧な応対ということよりも「人対人」の自然な思いやりや気遣いという、日本人の皆さんが持ついちばん良いところが、外国人に対しても自然に出るようにすれば良いことだと思います。

・でも少し日本に慣れてくると、日本はどこに行ってもサービスの水準が高く何でも便利なので、たまにそうでもないことに遭うと「耐えられない!」と感じてしまうこともあったりしますが…。

(5)中国もこんな風になればいいと思っている。

・時間が経てば中国もサービスが良くなっていくと、信じています。しかし、中国は日本のように平等・公平な社会ではないので、販売や飲食・サービス業に従事している人たちがみな日本のように1人ひとりのお客様に喜んでもらえるように「おもてなし」接客をしようとする状況になるには、まだ時間がかかると思います。

・それでも、いま日本で販売のアルバイトをしている留学生の気持ちとしても「お客様に喜んでもらえたら自分も嬉しい」という感じ方はあるし、そういう気持ちはどこの国の人にも自然にあると思うのです。

以上のように、いちばんお伝えしたいことは「メンツ」というものの存在を分かっていてほしいというところです。そして「個人のメンツ」と「中国人としてのメンツ」の2つのメンツがあることを知って、そこに配慮のある応対が必要ということです。もう1つは、サービスのレベルは全く問題はないので、あとは「外国人」を意識しすぎないで自然な接し方が普通にできればということなんです。

そういう応対を受けた中国人旅行者からは、今以上に「日本のおもてなしはやっぱりスゴイ!」と高く評価されることになると思います。そして、その体験談がSNSを通じてたくさん発信されて、もっともっと多くの人たちがそのおもてなしを体験しようと、日本を訪れるようになるのではないでしょうか?

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