訪日旅行者は「おもてなし」をどう感じているか? —①ショッピングのとき—

中国(大陸)から日本に来る旅行者は、みな日本の「おもてなし」をすごく良いと感じています。でも、日本人が気づかないところで、じつは不便や不満を感じているのも事実です。これは言葉の問題の他に、両国の文化的な背景や生活習慣が違うので、日本人にとっては常識的なことでも、中国人にとっては全く知らない初めてのことでどうしたらいいのか分からないという状況があるからだと思います。つまり、日本人はそれが中国人には説明しないと分からないことに気付いていない困りごとが、いろいろ起こっているわけです。

その中で、今回はまず旅行者にとって非常に重要なショッピングのシーンで、「おもてなし」を感じるときと、不便や不満を感じることを、中国からの留学生10人に語ってもらいました。

◆おもてなしを感じるとき

「おもてなし」が真っ先にイメージされるショッピングのシーンで、中国人旅行者がいちばん「おもてなし」を感じるのは、日本人販売スタッフの笑顔で接客する姿。とくに、忙しい中をずっと笑顔で接客し続ける姿に「すごい!」と感じます。そして単に笑顔でいるだけでなく、試着のときにサイズ違いの服を持ってきてくれたり、細かいサービスをしてくれたりするところに、中国との大きな違いを感じています。そのような違いの上に、さらに、

・ トレンドやファッションに詳しい販売スタッフがいて、自分に本当に適したものをすすめてくれる!

・高いものをすすめたり無理やり売りつけたりすることはなく、買わなくても笑顔で応対してくれる!

・売場に在庫が無いとき、パソコンで倉庫や他店の在庫を丁寧に確認してくれる!

・こちらの都合での返品も笑顔で受けてくれる!※中国では商品不良以外は受けてくれない。

・何でもお客さんの立場に立って考え、お客さんを大事にして気遣いしてくれる!

・自分ではそれがいいと気づかない商品やサービスを提供してくれる!

など、日本では当たり前の光景でも、中国からの旅行者にとってはものすごく親切に感じられます。

ショッピング笑顔の接客

中国では販売スタッフが無表情なだけでなく、個人売上を確保するために普通は高い商品をすすめるし、無理やり売ろうとするような姿勢も見られます。売場にファッションに詳しいスタッフもあまりいないし、接客されて買わないとスタッフは不機嫌になります。

そういう状況が普通の買物シーンなので、もし中国に笑顔で接してくれる販売員がいて丁寧に応対されたとしても、逆に何か高いものを売りつけられるのではないかと警戒してしまうかもしれません。ですから中国人旅行者は、言葉は不便でも日本で買物するときの方が、きっと自分にいちばん適したものをすすめてくれるだろうと期待感を持って、安心して「おすすめはどれ?」と聞くことができるのです。

1人の留学生のお母さんが日本に来た時、コートを買いたいというので新宿の百貨店に連れて行ったところ、年配の販売員さんが、言葉は殆どできなくても慣れた感じで終始にこにこして応対してくれました。まずは、ほど良い笑顔がずっと絶えないところにお母さんは感心していましたが、どれを買おうか迷ったときに、販売員さんがすすめてくれたのは、高い商品ではなくお母さんの要望や雰囲気にいちばん合うものだったので、お母さんは「やっぱり違うわ!」と感動して次々に3着買ってしまったそうです。もっとも、同じくらいのクオリティのコートを中国で買ったら値段は倍くらいするので、中国人にとって日本での買物は、サービスが良い上に値段も安い、とても嬉しいことなのです。

◆じつはこんなにある!不便や不満。どうなっていたらウレシイ?

以上のように、全般的には中国人旅行者に高く評価されている日本のショッピングシーンですが、その一方で不便や不満を感じていることも結構あることが分かります。以下、その声を大きい順に挙げてみました。

(1)最大の不満は、免税手続きに関すること:

・免税手続きに時間がかかりすぎ! とくに団体旅行は集合時間が決まっているから困る。

・いろいろ書くのが面倒!簡便な形に改善してほしい。

・大きい百貨店に免税カウンターが1~2か所しかなく、並ばなくてはならない!

・旅行者にとって時間イコールお金。 だから免税で並ぶのは損した気分。

・売場で免税ルールの説明が一切なく、カウンターに並んだ後で金額が足りないことが分かると腹が立つ!

・1つのショップの中で、免税はどの商品が5,000円以上か1万円以上かが、表示も説明もなく分からない。

・個人旅行でも、前に団体がいると並ばねばならない!

・そもそも売場には、買おうとする商品が免税の対象かどうかの表示がない!また同じブランドでも、百貨店やショッピングセンターなどの施設によって、免税になったりならなかったりする。

・パンフレットを渡されてもよく分からない!対象品にシールが貼ってあるなど、分かりやすい表示物があると良い。

・免税カウンターのスタッフは、日本人スタッフも中国人スタッフも態度があまり良くなく、笑顔もない!せっかく売場の「おもてなし」で良い気分なのに、最後に行く免税カウンターでそれが壊れちゃう!

免税カウンター

 (2)銀聯カード、WeChat(ウイチャット)、アリペイなどの支払いが普及していない:

・中国国内で買物の支払いはカードやWeChatが一般的で、現金はあまり使わない。とくにコインは使わない。

・日本ではWeChatやアリペイは殆ど使えないし、銀聯カードも百貨店などでしか使えないので不便。銀聯カードフラッグ

・カードを使うときに手数料を取られるところがあるが、何の説明もなく不信感を感じる。

・どのコインがいくらかよく分からないので、買物のたびに紙幣を出してしまい、釣銭のコインが溜まって困る。

・コンビニでコインを使うとき、慣れていないからどのコインがいくらか咄嗟に分からない。アメリカのように、手のひらにコインを乗せて出すと店員が必要なコインを取ってくれると良いんだけど…。

(3)Wi-Fiが使えない:

・友達に頼まれたものを買う旅行者が多いのに、店内から連絡が取れないのは不便。買えないことも…。

・せめてカフェではWi-Fiが使えるようにしてほしい。韓国では道を歩いていて普通に使える。

・外国人旅行者が行く店のインフラとして、Wi-Fiが使える環境整備は必須。

(4)荷物預かりやホテルへの配送のサービスがほしい:

・百貨店の入口近くの分かりやすいところに荷物預かりがあると良い。(中国の百貨店にはある)

・百貨店からホテルに買ったものを送ってくれるサービスがあると良い。有料でもOK!

・買ったものを帰りの空港で受け取ることができるサービスがあれば、持ち歩かないで済み便利。

(5)商業施設に休憩スペースが少なく疲れる:

・大きい休憩スペースがあれば、休めて良いだけでなく、旅行者同士で一緒に休みながら買ったものを見せ合い話が盛り上がるので、人が買ったものが欲しくなってもっと買うことが期待できる。

(6)在庫が少なくて買えないことが多い:

・日本のお店では、ファッションや靴などの在庫が少なく、同じものが3点ほしいときはまず買えない。

・靴は各サイズ1点しかないことも多い。香港などではサイズごとにたっぷり在庫がある。

・中国人はお土産用に同じものを複数買うのが普通。5個6個欲しい人も多い。日本はなぜ在庫がこんなに少ないのか、不思議。

(7)膝まづく接客はストレス:

・靴売場で膝まづく接客は土下座するようで、中国人は「何でそんなことまで?」とストレスを感じる。

(8)中国人と分かると目を合わせようとしない販売スタッフもいる:

・必要最低限の英語も話せない販売スタッフが多く、中国人と目を合わせようとしない人がいる。

・必要最低限の言葉は身につけてほしいし、中国語が分からなくても逃げないで笑顔で応対してほしい。

・言葉が通じないからしょうがないと思うのか、無言で商品をポンと出したりする。若い販売スタッフに多い。年配の人は言葉ができなくても笑顔で対応してくれることが多い。

(9)知らないルールが説明されず、いきなり注意されるのは理不尽:

・女性のフィッティングルームにあるフェイスカバーは中国にはないので、分からなくて使わずに試着すると、いきなり注意されたりする。中国人は知らないのだから、表示や説明が必要なことを分かってほしい。

・コンビニやドラッグストアで、足跡マークを先頭に並んで精算するルールの表示がなく、ルールを知らない中国人が空いたレジに行こうとすると、いきなり怒られる。これでは自分のメンツも中国人としてのメンツも潰れてしまい、かなり辛い。

・中にはマナーの悪い人もいるが、みな普通に言ってくれれば分かる。スタッフさんが優しく、ダメなことはダメと説明してくれれば良いが、説明しないで「中国人はマナーが悪い!」と言っていたりする。

(10)支払いのときに「当日クーポン券」がもらえたらウレシイ:

・中国では「当日クーポン」は普通にある売り方。旅行者なので「当日」使えることがポイント。もらうと得した気分で、その金額以上のものを買う人が多い。

(11)支払いの時に、端数の切り捨てなどちょっとでも安くなったら、すごくウレシイ:

・中国では普通にある売り方で、例えば15,250円が15,200円になるくらいでも嬉しい。

 

以上のうち(3)~(6)は、日本とは違う中国社会(東南アジアでも同様の傾向があります)の人間関係が背景にあり、日本人の皆さんにそこを理解してもらうことが、より良い状況を創っていく上で大切だと思われます。

中国では日本と違って、叔父・叔母・いとこ・祖父母との行き来は日常的で、普通に一緒にいることが多い家族という感覚です。ですから外国旅行に行くときは、全員にそれなりのお土産を買ってくることが必要だし、気軽に買って来てほしいものを頼まれます。また職場へのお土産も、日本では20人の職場なら20個入りのお菓子の箱を1箱で済みますが、中国では1人1箱が普通です。1箱で済ませたら相手にされなくなります。

そういう背景で買物の量が多くなるし、また頼まれたものを確認したいときなどはスマホで写真を撮って送り、見てもらうことも必要になります。なので、Wi-Fiが必要だし、そうしてやっと確認できたものを買おうとすると在庫がないというのは、とても残念というか、困ってしまいます。

また、団体旅行なら買ったものをバスの荷物入れに収納して動けますが、個人旅行の人たちは買物した大量の荷物を持ち歩かねばならず、子供連れやお年寄りには本当に辛いものです。それで、荷物預かりや配送サービス、休憩スペースがほしいという声は切実な要望なのです。