Archive: 2016/05

ここ数年、海外旅行に行く中国人がかなり増えてきています。そして日本は、常に海外旅行の行き先ランキングの中で上位に入っています。

なぜ、たくさんの中国人が旅行先に日本を選んだのでしょうか? 私は大きな理由が三つあると思います。

まず第一に、日本のサービスが良いことです。じつは日本に旅行に来る前に、中国の人はみんなネットやテレビなどで日本に関する情報をよく調べています。とくにいま中国で利用率の高いSNS、「ウェイチャット(微信)」や「ウェイボー(微博)」では、日本の社会や文化について多くの情報が発信されています。その中には、例えば「日本のサービス」、「日本の良質な商品」「日本のこだわり」といった記事がたくさんあります。つまり日本に来る前から、日本で受けることができるであろう質の高いサービスに、多くの観光客が強い期待を抱いていると考えられます。

ではなぜ、そんなに日本のサービスが良いと思われているのでしょうか? それは、日本に来た旅行者たちが日本のサービスを実際に体験して、自国(中国)との比較から分かったことではないかと思われます。そしてそれが訪日旅行客の急増とともに、たくさんのクチコミ(SNSを含めて)で広がったのだと思います。

実際に日本の接客マナーは、中国とはかなり異なっています。日本のデパートで買物をしたときに、店員さんが最初から最後までずーっと、ほど良い笑顔で接客応対してくれるのを見て、「やはり違いますね。」と言っている中国人が少なくありません。日本では当たり前になっている笑顔の接客は、外国人が見ると“プロの笑顔”と感じるのです。しかも中国では、そういう“プロの笑顔”は、やっとこの数年少しずつ見られるようになってきましたが、それまでは店員はみな無表情で、笑顔で接客する光景は殆ど見られませんでした。そして、それが中国では極めて当たり前の、普通の買物の光景だったのです。

それから、お客様に無理やり商品をおすすめしないことも、日本の接客マナーの大きな特徴です。気持ちよく買物したいという気持ちは誰でも一緒で、日本人でも中国人でもそこは同じだと思います。しかし中国では、「個人売上」の目標を達成するために、無理やりお客様に商品をおすすめしたり、お客様にとって必要ないものを買わせたりする店員がいます。そういう状況を比較すると、言葉が通じなくても、日本の方が買物しやすいと感じる中国人は多いのではないかと思われます。また、背景にそういう状況があるので、もし中国でずーっとほど良い笑顔で接客する定員さんがいたら、むしろお客様はその笑顔に警戒感を抱いてしまうようなところがあるわけです。だから媚びるような笑顔は不要で、普通の表情で説明する方が誠実で信頼できるという感じです。つまり、接客マナーの背景にあるものからしてかなり違っているわけです。

日本を旅行先に選ぶ理由の二つ目としては、日本のモノの“安全性が挙げられます。最近中国では食べ物の安全性と環境問題がよく報道されています。そうした中で、生活用品や飲食物を買うときに、まず安全性を気にする中国人が増えつつあります。一方、日本製品は世界中から「良質」という評判を得ています。所得が豊かになって質の高いモノを買いたくなった、主に都市部で暮らす中国人にとっては、日本を旅行するときに安全で質の高い日本製品をたくさん買って帰るのが“お得”だし、それが“最初の旅行目的”という人も多いと思います。

理由の三つめは、去年から香港に行く大陸からの旅行客が激減していることと関係があります。もともと大陸から香港に行く観光客の旅行目的は、「買物」と言いきって過言ではありませんでした。とくにブランド品を買いに行く観光客が中心だったと見られます。それが、日本ではニセ物がないため、同じ値段で香港より安心して買物ができるし、地理的にも欧米に行くよりは日本に行く方が近くて便利と考えて、買物目的で日本に来る中国人が多くなっているわけです。

中国では、ネット上に日本旅行のクチコミ情報が非常にたくさんあります。その記事の多くは日本を旅行してきた人々の感想や「旅行攻略」です。そうした中には日本で体験したものごとの他に、日本の「おもてなし」に対する感想や考えもいろいろ表現されています。クチコミ情報の中でいちばん多いのは、「日本人は笑顔のレベルが違う」「誰にも優しく親切」「モノの質が良い」などの感想です。

しかし、日本の「おもてなし」は、笑顔と親切にとどまっているのでしょうか?もう少し、その辺を深く考えてみたいと思います。(続きは来週…)

 

 

 

 

 

 

 

Read More

日本に短時間しか滞在できない外国人旅行者の「日本で味わってみたい、日本のおいしい食べ物ランキング」で、常に上位に入るのが「ラーメン」です。

ラーメン画像①

日本では地域によってラーメンの味も異なり、白湯、しょうゆ、みそ、塩など、いろいろなラーメンがあります。しかし観光客にとっては、それぞれの味を食べ比べる時間はないので、たまたま食べた1杯を「日本式ラーメン」だと思い込むことが多いと思われます。

では、いま中国で最も人気のある日本のラーメンはどんなラーメンでしょうか? ネットで調べてみると、最初に出てくるのは博多ラーメンの『一蘭』です。ネット上でその味は「神話の中にしか出てこない味」ともいわれていて、既に香港にも支店があります。

一蘭のラーメン

じつは何年か前に、中国の友人から「一蘭のラーメンの店はどこにある?」と聞かれたときに、すぐには答えられませんでした。その友人から「日本に行って一蘭のラーメンを食べるのが流行っているよ!」といわれ、その理由を詳しく聞いてみると、「芸能人がよく行く店だから」とのことでした。確かに、ネットでリサーチすると、日本で『一蘭』のラーメンを食べた後に写真をアップしている中国の芸能人が多いようです。『一蘭』が一番人気になった理由には有名人の影響があると思われますが、元々濃い味が好きな中国人にとっては、『一蘭』の濃さがちょうど良いからということもあるでしょう。

もちろん、日本ラーメンは『一蘭』だけが人気なわけではなく、「日本ラーメン」全般が中国人旅行者に人気だと思われます。日本で最初にラーメンを記載した歴史記録は、今から300年くらい前、江戸時代中期の儒学者・安積澹泊(あさかたんぱく)が書いた『舜水朱子談綺』の中に出てきた「中華麺」です。また水戸黄門で有名な水戸光圀さんも、うどんのような麺食を食べたという記録があります。そして日本にラーメンを作る技術が伝わってきたのは、清朝が滅んだ1912年のことで、最初は横浜に伝わってきたという説があります。当時は「ラーメン」ではなく「龍麺」と呼ばれていたそうです。それから100年余りを経た今、「日本ラーメン」は地域によっても味が異なりそれぞれ特徴がある、‟日本独自の食べ物”に進化しました。

一方、元々の中国の麺の種類はといえば、それはもう数えきれないくらいの、味も具材も麺の形状も麺の材料も様々な、ものすごい種類がありました。そしてその歴史はというと、2000年以上前の前漢の時代には麺の形状の食べ物が存在していたことが発掘調査などで証明されています。また、今ももちろん、たくさんの種類の麺が中国にはあり、とくに北方の人たちは麺をよく食べます。こねた材料を両手で引っ張りながら細い麺を創っていく手打ち麺が主流で、西安の麺がとくに有名です。つまり麺は中国で生まれ古くから中国人の生活の中で馴染みのある日常的な食べ物であること、そしてその製法は中国から日本に伝わったものであることは間違いないのですが、いま日本を旅行する楽しみの一つとして、中国人が「日本ラーメン」を味わう時代になっているわけです。

ではなぜ、元々中国から日本に伝わったラーメンが、中国人観光客の人気を博したのでしょうか?

ラーメン画像②

その理由は大きくは2つあると思います。

まず、旅行客にとって、ラーメンは店に入ってすぐに食べられる、すなわち短時間で日本の美味しいものを味わえる美食であるということが挙げられます。

もう1つは、多くのラーメン屋さんの入り口には布製の「のれん」があります。中国人から見ると、「のれん」は日本にしかない、日本らしい特別なモノであり、せっかく日本に来たのだから日本らしい雰囲気を体験してみたいんです。だから日本でしか見られない「のれん」を手でちょっと斜めに上げてお店に入ってラーメンを食べてみたい!ということになるわけです。居酒屋人気の理由にもつながるところです。

それにしても、中国にもいろいろなラーメンがあるのですが、どうしてわざわざ日本に来てラーメンを食べるのでしょうか?『一蘭』のように芸能人の影響力というところもありますが、私はもう1つ別の理由があると思います。

ラーメン屋ののれん

それは、日本のポップカルチャーの発信です。今の20代30代の中国人の多くは、子供の頃から日本のアニメを見て育ってきました。大人になって、アニメに出てきた食べ物に実際に触れられる機会が出てくると、そこに興味を持つようになってきたと考えられます。例えば、「NARUTO」によく登場する「一楽ラーメン」。アニメの主人公と同じように、疲れているときにのれんを上げて店に入り熱くて美味しいラーメンを食べて、また旅に出るという行動(体験?)は、旅行の時の幸せな時間となることでしょう。とくに中国人には疲れた時に温かいスープや麺類などの流し込めるものを食べるのが良いという気持ちや習慣があるのも、アニメのシーンと相俟ってラーメン人気の背景といえるのではないでしょうか。

このように、元々中国から日本に伝わってきたラーメンは長い年月を経て日本の食文化の一部となり、今や日本の食文化として中国に伝わっています。面白い「文化の逆輸出」だと思います。

中国の大学生?

2016年に入ってから、日本政府により、中国の大学生(指定校)等に対する来日ビザの発給要件や申請手続きの簡素化がすすめられています。従って、今後ますます多くの中国の若者が日本にやってくると考えられます。その若者たちに、日本の美味しいラーメンをもっと知ってもらい、もっと味わってもらいたいと思っています。

 

 

Read More